私たちは、急性期と慢性期の両方で、NT-proBNPが診断および予後とどのように関連しているかについて調べました。ニュージーランドの都市とシンガポールで試験を実施し、救急外来におけるNT-proBNPを検討した早期試験と同じ基準に基づいて、患者を募集しました。
ニュージーランドで500名以上、シンガポールで600名以上を対象に試験を行ったところ、息切れがみられる人は、これら2つの場所でそれぞれ違うことがまず明らかになりました。シンガポールの人は、ニュージーランドよりもかなりの差で年齢が若く(10才以上)、そして心不全の頻度が低い傾向がありました。
シンガポールでは、このような人々の約4人に1人が心不全と診断されます。ニュージーランドでは、このような人々の約3人に1人が心不全と診断されます。これ以外にも顕著な差があり、主に年齢差に関連するものでした。
心房細動は心不全によくみられる複雑で異常な心拍リズムです。腎機能は加齢に伴い悪化する傾向があり、より高齢のニュージーランド集団の方が腎機能低下しているため、ナトリウム利尿ペプチド値は高値になります。
これが何を意味しているかというと、アジア人グループは他の交絡や干渉によるノイズが比較的小さいため、NT-proBNP検査で実際に心不全例を選別するのに優れています。そして、偽陽性が少ないことが鍵となります。
全体的な精度もわずかに高く、実際にシンガポールの方がニュージーランドよりも精度が有意に高くなります。陽性と陰性の検査結果のうち正しいものをすべて選び、それらを結果の総数で割ると、正確度つまり正診率が得られます。ニュージーランドの正診率は、シンガポールと比較して検査を受けた100名当たり約15名少なく、かなり大きな差があります。このことからも、おそらく欧米の大部分とアジアの大部分の間に大きな差があることが合理的に推定できます。その理由として、発現年齢の差がアジアの大部分で共通因子と考えられるからです。
私たちには、中国、日本、インド、東南アジア諸国8ヵ国からデータを収集したレジストリがあります。特に韓国と日本は、心不全の発現年齢が欧米とそれほど変わりませんが、それでもなおわずかに若い傾向があります。その他の国では、さらに若くなります。
したがって、診断としてのNT-proBNPは、欧米の医療機関よりもどちらかというとアジアの医療機関の方が実際によく機能すると確信しています。継続的なモニタリングツールや予後との関連についてNT-proBNPを使用した長期経過観察に関しては、アジア人集団における連続ガイド下試験のエビデンスを多く持ち合わせていません。
とはいえ、私たちは長期経過観察のために2つのコホート(1つはシンガポールで約1000名の心不全例、もう1つはニュージーランドで約1000名)を募集し、NT-proBNP値と2年間の死亡リスクを関連付けました。この関係はとても似ていて、両国で全く同じです。
以上から、予後不良のリスク指標としては、アジアと欧米で同等に機能するものと考えられます。一方、診断の指標としては、欧米よりもアジアでよく機能します。