Dr Raphael Twerenbold
Cardiologist, University Hospital Basel, Switzerland
 

hs-TnTが生み出す違い – Dr Twerenboldによる事例報告

KEY TAKEAWAYS

  • 軽微な心筋傷害の診断精度を向上させるという点で、高感度トロポニンは従来のトロポニンよりもベネフィットと安全性が高くなっています。

動画でお話しいただいた内容:

45歳の患者さんが急性胸痛を訴えて救急科(ED)を受診したのですが、当院ではその当時はまだ従来の感度の低い心筋トロポニン検査を使用していました。標準治療として心電図(ECG)検査を行いましたが、虚血の徴候は認められませんでした。また、心臓バイオマーカー検査としてクレアチンキナーゼ(CK)、クレアチンキナーゼ心筋バンド(CK-MB)、従来のトロポニンを検査したところ、すべて基準範囲内だったので私たちは安堵しました。6時間後に標準治療として再検査を行い、そちらもすべて基準範囲内でした。

ED受診時には痛みはなくなっていたことから、数日後に心臓負荷試験のために受診していただきたいと伝えて帰宅してもらいました。その後、患者さんは受診されましたが、予定より早く受診されました。急性胸痛が再発したのです。

通常の手順どおり、ECG検査も再度実施しました。すると思いがけなく、冠動脈が完全に閉塞したST上昇型心筋梗塞が検出されたのです。遺憾ながら、数日前にこの患者を帰宅させたのは明らかな誤りであったわけですが、幸いなことにこの患者さんが観察試験に登録されたため、EDの初回受診時に採取した一連の検体にさかのぼって評価を行うことができました。そして、最初の検体を用いた評価に、より感度の高い心筋トロポニンアッセイを使用することができました。その結果、初回受診時の段階で既に、すべての検体で上昇が認められていました。つまり、4日前に見逃してしまった軽微な急性心筋梗塞を、より感度の高いアッセイであれば検出できていただろうということです。高感度のアッセイが患者の安全性とベネフィットの大幅な向上につながるのは明らかです。

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