Q3:病院ではどのように0h/1h、0h/2hまたは0h/3hアルゴリズムを選択すべきですか?それと関連して、どの基準に基づいて適切なアッセイを選択すべきですか?
これらのプロトコルを使用するには、1時間、2時間あるいは3時間後のいずれの時点で再検査を行うかどうかにかかわらず、高感度トロポニンアッセイが利用可能である必要があります。病院でこれが利用できない場合、迅速プロトコルを使用することはできません。
第2に、アッセイは査読された試験で検証され、公表済みであり、その使用に関するプロトコルが明確でなければなりません。その上で、1時間、2時間あるいは3時間後のいずれかの時点で再検査を行う選択肢がある場合、病院は、患者の退院をできるだけ早く決定する必要があるかを明確にしなければなりません。病床が過密状態でなく、患者を退院させる必要がない場合は確かに0h/6hアルゴリズムを選択することができます。しかし、世界のほとんどの病院はこの過密の問題に直面しているため、迅速プロトコルが高く評価されています。
お好きなプロトコルを使用してよいのですが、現実問題、常に60分後きっかりあるいは120分後に再検査できるとは限りません。採血が遅れることがあったり、看護師や医師が多忙なこともあります。ですから、私は最大限の柔軟性という考え方をおすすめします。もし実際の採血時間が1回目の検体採取の91分後なら、1時間後の再検査よりも2時間後の再検査に近いため、0h/2hプロトコルを使用します。また、もし2時間プロトコルの許容範囲から30分超離れている場合は、3時間プロトコルを使用することになります。何らかのインフラがあり、常に決められた時点で採血を行えるような対策を導入している場合(これはガイドラインで現在推奨されている状況ですが)を除き、柔軟性が必要だと考えます。利便性を考え、あるいは病院によって異なる血液検査所要時間の差を考慮し、ガイドラインでは、患者の入院後、または発症後早期に1回目の採血を行い、1回目の血液検査結果を待たず、きっちり60分後に2回目の血液検査を実施することで、結果が揃った際に2つの結果を一緒に解釈することができます。これもアプローチの1つです。
Q4:ESC 2020ガイドラインで最も推奨されるESC 0h/1hアルゴリズムの導入について、新しい実践的ガイダンスはありますか?
ぜひこのアルゴリズムを使い始めるべきだと考えます。これらのプロトコル使用に対する懸念の多くには根拠がありません。こうした非常に迅速なプロトコルで最も恩恵を得るのは、特に、トロポニン濃度低値と濃度変動が小さいことで識別されるルールアウト群でしょう。これは、心筋障害を除外できることを意味しますが、この群では、虚血イベントまたは心血管イベントの将来のリスクが極めて低いため、診断的所見だけでなく、予後についても非常に意義のある所見です。生物学的にも、これらの患者では高い確度で退院できることは分かります。30日以内の梗塞、または重大な心血管イベントが発生する可能性は低いです。また、当然ながら、患者を退院させたら終わりというわけではなく退院後も、引き続き検査を継続します。医療従事者の診察を受けさせ、可能であれば退院後、理想的には退院前にストレステストを行い、画像検査および心エコー検査を行うべきです。極めて低リスクの患者を除いては、心筋梗塞の見逃しや退院後に死亡する恐れがあるといった懸念は忘れてください。現実的には、以前の0h/6h~0h/9hの診療と比較してイベントの発生率は極めて低いでしょう。
1回目の採血の結果を待たずに1時間の間隔を空けて2回目の採血を行うという推奨は、コストを増やすかもしれません。症例の20~30%では不要な2回目の採血が実施される可能性、つまり1回目の血液検体の値が極めて低いことを知っていれば2回目の採血は行わなかったというケースがあるためです。それでも、このように一定の採血間隔を設ける利点は、長い、時には過度に長くなる検査時間に依存しなくて済むという点です。病院によっては、検査時間が常に60分以内となるようインフラが整備されていないこともあるでしょう。1時間半~2時間かかることもあります。救急科で、かなり逼迫している状況の場合、患者の退院を早急に決めたいと感じるかもしれません。救急科から帰宅させたり、退院させたり、または救急科の患者をより多く入院させるために、もう少しお金を投資しようと思うのであれば、これが妥協点だと考えます。経済的な効果があるため、多くの国では理にかなっていると考えます。(検査結果を)待ちたいと考える国もあるかもしれませんが、その場合、0h/1hプロトコルの有効性は低下します。