Dr James L Januzzi
Cardiologist, Massachusetts General Hospital. Prof of Medicine, Harvard Medical School
 

ARNiによる治療がナトリウム利尿ペプチドの使用に及ぼす影響

KEY TAKEAWAYS

  • 脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)はネプリライシンによる分解の基質であることから、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNi)による治療を受けている患者では解釈が難しくなります。
  • ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)はネプリライシンによる分解を受けないため、ARNi投与患者の検査で用いられるスタンダードなバイオマーカーとなる可能性が高いでしょう。

PARADIGM-HF試験では、ARNiの使用に伴って、心不全による入院の20%の減少、心血管死の20%の減少、および全死因死亡率の16%の低下が認められました。これは、心不全管理のゴールドスタンダードであるエナラプリルとの比較によるものです。こうした結果を踏まえると、ARNiによる治療が心不全管理の新しいゴールドスタンダードになると考えるのが、極めて妥当と言えるでしょう。

BNPは、ARNiの使用患者で上昇が認められる血管作動性ペプチドの1つです。そのため、このクラスの薬剤の投与を受けた患者ではBNP値が上昇します。理論的には、これは患者にとってのベネフィットとなりますが、実際には、BNPの上昇がこの薬剤のベネフィットを説明するものかは分かっていません。おそらく、BNP単独ではなく、複数のペプチドが関与していると考えられますが、確実に言えることは、BNP値の上昇の程度は患者によって少しずつ異なるため、ARNiの使用患者におけるBNPの解釈は非常に難しいものになるということです。

一方で、ネプリライシンで分解されないNT-proBNPはARNiによる治療を受けている患者でも上昇することはありません。実際には薬剤の投与開始後に急速に低下するのが一般的で、これは薬剤のベネフィットが反映されているためです。以上を踏まえ、NT-proBNPは、ARNi投与患者の検査で用いられるスタンダードなバイオマーカーとなる可能性が高いと考えられます。

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