患者は、呼吸困難および頻脈などの非特異的な症状を呈して受診。長時間のフライト後に下肢の腫脹が認められました。当該患者には3年前に深部静脈血栓症(DVT)の既往がありました。臨床検査では炎症マーカーの上昇が認められました。心電図(ECG)では右脚ブロック(RBBB)、高感度トロポニンT(hs TnT)の動態パターンでは48時間以内の上昇・下降を示し、肺画像検査では複数の血栓塞栓事象が認められました。本症例では、診断に至る前に臨床背景を考慮する必要があります。
急性心筋梗塞[ST上昇型心筋梗塞(STEMI)の定義で鑑別できる場合を除く]と、肺塞栓症や心室性頻脈性不整脈などの急性心臓障害を伴う他の疾患を鑑別することは必ずしも容易ではなく、これには鑑別診断のための精密検査が必要となります。1
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診断
急性肺塞栓症
この患者は、典型的な臨床的特徴を呈し、長時間のフライト後という同疾患を示唆する状況にありました。洞性頻脈、SI-QIIIパターン、右脚ブロックと典型的なECG変化が認められ、血管造影CT検査(256スライスCT)では両側性に複数の血栓塞栓事象(赤矢印)が確認されました。高感度心筋トロポニンT(cTnT-hs)値は急激に上昇しその後下降する急性の動態プロファイルを示しました。急性のnon-STEMIの鑑別診断には、臨床背景を考慮することが重要な鍵となります。