2型糖尿病心不全の予防に向けた取り組み ~JCS/JDS合同コンセンサスステートメントの実践~ のために~

受信トレイで最新の更新を取得します。 最新情報を入手 糖尿病心不全における慢性心不全の特徴、現状と重要な臨床課題について教えてください。 まず、糖尿病と心不全は非常に密接な関係にございます。 スライドに示しますように、実は糖尿病は、高血圧よりも強い心不全のリスクであることが示されております。 さらにこのスライドは、日本における心不全レジストリーの糖尿病患者さんの割合を示しておりますが、どのレジストリーにおきましても30%以上の心不全の方が糖尿病を合併しております。 このように、糖尿病と心不全は非常に密接な関係がございます。 ただ、多くの患者さんが実は無症候性なのです。 私たちは、外来患者さん、あるいは入院患者さんにおきまして、全例に心エコーを施行しております。 そうすると、糖尿病患者さんの約20%に無症候性の心機能低下を認めております。 これは無症候性ですので、なかなか気付くことができないという問題がございます。 しかしながら、通常、糖尿病外来ではこのように心エコーを撮ることは恐らくないであろうし、ナトリウム利尿ペプチド、例えばNT-proBNPなどのようなものを定期的に測定することも、今ほとんど行われていないのではないかと思われます。 一方で現状では、さまざまな大規模試験から、軽症あるいは無症候性の心機能低下におきましても、SGLT2阻害薬が非常に効果があり、それによって心不全の予防ができることが明らかになりました。 ここに示しますように、心不全は、いったん発症してしまうと致死的で、予後不良の疾患です。 ステージA、Bは症状はありませんが、ステージCからは症状が出ておりますとそのまま心不全に進行して、やがて死に至ってしまいます。 そこで、先ほどのSGLT2阻害薬をステージA、Bの無症候性の段階にもし使うことができれば、心不全発症を抑制することができます。 これらの背景から、次に示しますように、日本糖尿病学会と循環器学会では、合同で糖尿病患者さんにおける定期的な心不全スクリーニング検査として、コンセンサスステートメントを発表いたしました。 このステートメントでは、年1回、胸部X線や心電図とともにBNPあるいはNT-proBNPを測定して、定期的な心不全のスクリーニング検査を行うことを推奨しております。 糖尿病患者における心不全予防の課題を、糖尿病診療の中でどのように解決できるか教えてください。 糖尿病の先生も非常に今、心不全を理解されているので、いわゆる第7の合併症として定期的な検査が行われていくのではないかと期待しております。 従来糖尿病の外来では、網膜症や腎症といった合併症については定期的な検査が行われてまいりました。 これと同様に今後、糖尿外来やクリニックにおいて、心不全について、あるいは心機能について、定期的に検査することが推奨されております。 糖尿病患者さんを診察する医師が、例えば今までは腎症や網膜症といった他の合併症については定期的な検査を行っていましたが、これと同様に心不全について、定期的に例えばナトリウム利尿ペプチドの測定などの検査を行い、先ほどのステージA、Bの無症候性心機能低下の段階からSGLT2阻害薬を投与し早期に介入すること、あるいは、もし症状が出るとステージCになりますので、この段階で速やかに循環器専門医に紹介することで、心不全の悪化を抑制することが可能になると思われます。 こういったことは今後、高齢化社会のわが国で心配されている心不全パンデミックを抑制する上でも、非常に意義が大きいかと思います。 糖尿病医にとってナトリウム利尿ペプチドの測定はどのような価値があるか教えてください。 はい。このコンセンサスステートメントは、年1回、定期的に糖尿病患者さんのBNPあるいはNT-proBNPを測定することが推奨されております。 心エコーを通常のクリニックで行うことはなかなか難しいのですが、これらの検査は採血のみですので、通常のクリニックでも容易に行えます。 特にNT-proBNPの方は通常の生化学検査と一緒に行いますので、採血管も1本で済みますし、採血量も少なくて済みます。 こういった利点があるのではないかと思います。 例えばクリニックで診察室に入ってきたときに少し動いていると息切れがしているとか、あるいは夜間に頻尿があるのは、実は糖尿病の症状ではなく、先ほどのナトリウム利尿ペプチドが心機能低下によって上がっているために夜間頻尿になっている場合もございますので、こういった症状を早く見つけてあげることが重要ではないかと思っております。 先に述べたように、実は糖尿病患者さんの一定数に無症候性の心機能低下を認めておりますので、その早期発見のためにはナトリウム利尿ペプチドを測定して、高値の場合は先ほど申しましたように糖尿病治療薬のうちでもSGLT2阻害薬を優先的に使用するという、いわゆる薬剤選択の根拠としてもこの検査は重要かと思います。 ただし、このフローチャートに示しておりますように、複数の項目が陽性である、すなわち何らかの症状がある、あるいは心電図異常、それから胸部X線の異常、そしてBNPが100pg/mLまたはNT-proBNPが400pg/mLを超えるといった場合、既に心不全のステージC、Dの可能性がございます。 先ほど申しましたように、このステージは非常に予後が不良ですので、速やかに循環器専門医に紹介する必要があります。 糖尿病医はナトリウム利尿ペプチドのカットオフ値をどのように解釈して使用するべきか教えてください。 “実際にこのナトリウム利尿ペプチドをどのように使うかということですが、このスライドは日本心不全学会が示すガイドラインです。 BNPあるいはNT-proBNP値のカットオフを示しております。 ここにあります薄いオレンジ色で示されるBNP 40pg/mL、NT-proBNP 125pg/mL以上では、既に軽症の心不全の可能性がございます。 従いまして、このような糖尿病患者さんにおきましては、早めに循環器専門医を紹介して心エコーなどの精査を進めるか、あるいは先ほど申しましたように、SGLT2阻害薬を優先的に使用することは、心不全発症予防のためにも有用かと思います。...

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