Dr Byung-Su Yoo
Cardiologist/ Professor, Division of Cardiology, Wonju College of Medicine, Yonsei University, Korea
 

韓国の臨床症例:ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)の連続測定および心不全の予後

CTL-ProfCho-Case-Study-Oct-Asset-1

45歳女性

主な徴候および症状

4日前より急性呼吸困難(NYHA IV)
呼吸困難/起坐呼吸(+/+)
咳嗽/痰(-/-)

既往歴

糖尿病なし
肺結核なし
肝炎なし
高血圧に対して投薬(アムロジピン5 mg)を10年間

診察

労作時呼吸困難/発作性夜間呼吸困難(+/+)
動悸/頭痛/発汗(+/+/+)
心雑音を伴わない頻拍
両肺野の断続性ラ音
足部浮腫(++/++)

胸部X線(CXR)

 

両側の肺うっ血を伴う心拡大
 
 

MRI

 

EF = 25%、MRIにおける心筋中層の遅延造影
(ガドリニウム遅延造影、LGE)所見
 
 

CT血管造影

 

CT血管造影では冠動脈の重大な狭窄なし
 
 

NT-proBNPの連続値および投薬

  入院時 初回来院 2回目の来院 3回目の来院 4回目の来院
 
症状 NYHA II NYHA III NYHA I
 
投薬 Acertil 4 mg
Dilatrend 3.125 mg 1日2回
Furix 40 mg 1日2回
aldactone 25 mg 1日1回
Procoralan 5 mg 1日2回
entresto 50 mg 1日2回 50 mg 1日2回 100 mg 1日2回 50 mg 1日2回
 

NT-proBNPは、退院後の外来時における初期追跡調査期間中および薬剤調整期間中の優れたバイオマーカーです。

入院時
NYHA IV
NT-proBNP 8900 pg/mL

退院から2週間後(初回外来時)
NYHA III
NT-proBNP 2300 pg/mL

4ヵ月後の外来時
NYHA II
NT-proBNP 210 pg/mL

12
Dr Yoo Clinical Case - 3

What time period after therapy adjustment in Patients with Recent HF Destabilization can help predict prognosis?

診断

 

De-novo心不全

 

駆出率(EF)が低下した心不全

 

R/o特発性DCMP(非虚血性拡張型心筋症)

著者の見解

  • 追跡調査期間中のNT-proBNP値の変化は、不安定な心不全患者の臨床状態の変化と相関しており、NT-proBNP値の相対的変化は、将来の臨床イベントの予測因子として優れています。

  • PIONEER-HF試験では、血行動態が安定した後にサクビトリル・バルサルタン療法を開始すると、エナラプリル療法よりもNT-proBNP濃度が低下し、この差は1週目までに明らかとなりました。1

  • 退院前のNT-proBNP値または1~2週間後時点におけるNT-proBNP値の短期変化(パーセント値)は、臨床イベントの強力な予測因子です。

  • さらに、NT-proBNPのモニタリングは、不安定な心不全患者の臨床スコアリングに独立した予後情報を追加しました。 

  • 以上のことから、NT-proBNP濃度の変化率の連続モニタリングは、直近で不安定な心不全を呈した外来患者の臨床評価において優れた予後情報となります。

  1. Eric J. Velazquez et al, N Engl J Med 2019; 380:539-548
CTL-ProfCho-Case-Study-Oct-Asset-1

62歳女性

主な徴候および症状

10日前より急性の重度胸痛
3日前より急性呼吸困難(NYHA IV)
その他の特異的な徴候および症状なし

既往歴

糖尿病に対して経口薬(Diabex 500 mg、Sitagliptin 100 mg)を10年間投与
喫煙(年間40箱)
CK-MBおよびトロポニン値の上昇

診察

血圧 118/68 mmHg
呼吸数 92/min

胸部X線(CXR)

 

胸部X線検査で
胸水および肺うっ血を確認
 

心電図(ECG)


ECGで心筋梗塞の所見なし
 

冠動脈造影



冠動脈造影で右冠動脈遠位部(dRCA)および左回旋枝遠位部(dLCX)に重大な狭窄を確認
 

MRI

 

MRI:ガドリニウム遅延造影(LGE)(+)
EF:35%
LVEDD:5.2 cm

MRIで心筋梗塞を意味するLGEの増大を確認
 
 

NT-proBNPの連続値および投薬

  入院時 1日目 2日目 退院時
(5日後)
30日後 180日後 365日後
 
CK MB
(*< 3.7 ng/mL)
18.40 1.60 0.63 0.53 0.58 0.22
 
トロポニンI
(< 0.046 ng/mL)
2.648 1.649 0.271 0.211 0.012 < 0.015
 

初期のNT-proBNP値は7800 pg/mLで、同患者では、呼吸困難および胸痛が持続しました。連続測定では濃度の低下が認められました。

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Dr Yoo Clinical Case - 4

Which of the following is the serial NT-proBNP level status of the patient with the best prognosis?

著者の見解

  • ナトリウム利尿ペプチド(NP)は急性心筋梗塞(AMI)患者のアウトカムの重要な予測因子ですが、経時的に変化する可能性があります。1

  • NT-proBNP値の経時的変化は、EFまたは心室容積と臨床症状の同時変化と関連することから、これらのナトリウム利尿ペプチドがAMI後に進行性リモデリングを呈する患者において有用なサロゲートマーカーとなる可能性が示唆されます。2

  • さらに、退院から1ヵ月後のNT-proBNP測定における持続的な上昇は、AMI患者における死亡リスクの上昇と関連していました。

  • NT-proBNPを用いた退院後または早期のリスク層別化は、AMI後の高リスク患者を特定できる可能性があります。

  1. Tom Hendriks et al The International Journal of Cardiovascular Imaging volume 33, pages 1415–1423 (2017).
  2. Jens C. Nilsson MDa Am Heart J. Volume 143, Issue 4, April 2002, pages 696-702

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