韓国の臨床症例:ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端フラグメント(NT-proBNP)の連続測定および心不全の予後
27 10月 2021
45歳女性
胸部X線(CXR) |
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MRI |
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EF = 25%、MRIにおける心筋中層の遅延造影
(ガドリニウム遅延造影、LGE)所見
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CT血管造影 |
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NT-proBNPの連続値および投薬
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入院時 |
初回来院 |
2回目の来院 |
3回目の来院 |
4回目の来院 |
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症状 |
NYHA II |
NYHA III |
– |
– |
NYHA I |
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投薬 |
Acertil 4 mg
Dilatrend 3.125 mg 1日2回
Furix 40 mg 1日2回
aldactone 25 mg 1日1回
Procoralan 5 mg 1日2回 |
entresto 50 mg 1日2回 |
50 mg 1日2回 |
100 mg 1日2回 |
50 mg 1日2回 |
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著者の見解
追跡調査期間中のNT-proBNP値の変化は、不安定な心不全患者の臨床状態の変化と相関しており、NT-proBNP値の相対的変化は、将来の臨床イベントの予測因子として優れています。
PIONEER-HF試験では、血行動態が安定した後にサクビトリル・バルサルタン療法を開始すると、エナラプリル療法よりもNT-proBNP濃度が低下し、この差は1週目までに明らかとなりました。1
退院前のNT-proBNP値または1~2週間後時点におけるNT-proBNP値の短期変化(パーセント値)は、臨床イベントの強力な予測因子です。
さらに、NT-proBNPのモニタリングは、不安定な心不全患者の臨床スコアリングに独立した予後情報を追加しました。
以上のことから、NT-proBNP濃度の変化率の連続モニタリングは、直近で不安定な心不全を呈した外来患者の臨床評価において優れた予後情報となります。
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Eric J. Velazquez et al, N Engl J Med 2019; 380:539-548
62歳女性
胸部X線(CXR) |
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心電図(ECG) |
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冠動脈造影 |
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冠動脈造影で右冠動脈遠位部(dRCA)および左回旋枝遠位部(dLCX)に重大な狭窄を確認
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MRI |
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MRI:ガドリニウム遅延造影(LGE)(+)
EF:35%
LVEDD:5.2 cm
MRIで心筋梗塞を意味するLGEの増大を確認
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NT-proBNPの連続値および投薬
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入院時 |
1日目 |
2日目 |
退院時
(5日後) |
30日後 |
180日後 |
365日後 |
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CK MB (*< 3.7 ng/mL)
| 18.40 |
1.60 |
0.63 |
0.53 |
0.58 |
0.22 |
– |
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トロポニンI (< 0.046 ng/mL)
| 2.648 |
1.649 |
0.271 |
0.211 |
0.012 |
< 0.015
| – |
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初期のNT-proBNP値は7800 pg/mLで、同患者では、呼吸困難および胸痛が持続しました。連続測定では濃度の低下が認められました。
著者の見解
ナトリウム利尿ペプチド(NP)は急性心筋梗塞(AMI)患者のアウトカムの重要な予測因子ですが、経時的に変化する可能性があります。1
NT-proBNP値の経時的変化は、EFまたは心室容積と臨床症状の同時変化と関連することから、これらのナトリウム利尿ペプチドがAMI後に進行性リモデリングを呈する患者において有用なサロゲートマーカーとなる可能性が示唆されます。2
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さらに、退院から1ヵ月後のNT-proBNP測定における持続的な上昇は、AMI患者における死亡リスクの上昇と関連していました。
NT-proBNPを用いた退院後または早期のリスク層別化は、AMI後の高リスク患者を特定できる可能性があります。
- Tom Hendriks et al The International Journal of Cardiovascular Imaging volume 33, pages 1415–1423 (2017).
- Jens C. Nilsson MDa Am Heart J. Volume 143, Issue 4, April 2002, pages 696-702