韓国の臨床症例:呼吸困難患者の鑑別診断のためのNT-proBNP
27 10月 2021
70歳男性
著者の見解
ICON試験では、NT-proBNPが急性心不全の診断に有用なツールで、年齢に依存しない「ルールアウト」カットオフの300 pg/mLで非常に感度が高く、年齢層別化された3つの「ルールイン」カットポイントの450 pg/mL(75歳)で感度および特異度が高かったことが示されています。1
本症例は、臨床情報では診断がつきにくい急性期に、心不全の診断を除外する上でNT-proBNPが有用であることを示しています。
NT-proBNP 125 pg/mLは、非急性期に心不全が疑われる患者のカットオフ値であり、急性期には年齢層別カットオフ値を用います。2
COVID-19患者では、しばしばNT-proBNPの有意な上昇が認められます。この所見の重要性は不明であり、診断のための明確な臨床的証拠(臨床徴候や症状など)がない限り、必ずしも心不全の評価や治療が開始されるわけではありません。3
38歳女性
胸部X線(CXR) |
|
|
心電図(ECG) |
|
|
肺CT |
|
|
肺CTで両肺動脈幹の血栓性閉塞を認める
|
|
|
|
|
経胸壁心エコー(TTE) |
|
|
心エコー検査で、RV拡大およびRA内に可動性血栓を認める |
|
|
|
著者の見解
急性心不全(AHF)は、NT-proBNP上昇の一般的な原因の1つです。
AHFが疑われる患者では、NT-proBNP値が正常範囲内である場合、AHFの診断となる可能性は極めて低いです(閾値:NT-proBNP 300 pg/mL未満) 1
NP値の上昇は、様々な心臓および非心臓性の原因にも関連している可能性があるため、AHFの診断を自動的に確定するものではありません。1これに関して、CHF以外でNP値上昇に関連する急性疾患については、腎不全、肺疾患および肺塞栓症、高齢、肝硬変ならびに敗血症があると考えられます。1
心不全が疑われる急性の状況では、AHFの原因(CHAMP:急性冠症候群、高血圧緊急症、不整脈、急性の機械的合併症、肺血栓塞栓症)を考慮する必要があります。2
-
血漿NT-proBNPは、右室過負荷に至る肺塞栓症症例の大半で上昇します。
-
血漿NT-proBNP値は右室過負荷の程度を反映し、短期転帰の予測に役立つ可能性があります。
-
呼吸困難およびナトリウム利尿ペプチド値異常を有する患者の鑑別診断では、急性肺塞栓症を考慮すべきです。
- Januzzi et al, Eur H Jour 2006; 27:330
- Ponikowski P et al 2016 Eur J Heart Fail 2016; 18:891–975